講師育成ビジネスの落とし穴と成功に導く4つのモデル

【個人事業の処方箋シリーズ
個人事業のよくある問題について、背後にある原因と解決策をわかりやすく解説するシリーズです。
持続的に個人事業を成長させるためのヒントをご提供します。

こんにちは!LincWebの水野です。

講師育成ビジネスは、一見すると魅力的なモデルに見えますよね。自分のノウハウを広め、仲間や後継者を育て、ビジネスがどんどん広がっていく。そんな未来を想像する人も多いでしょう。

でも、現実は思ったより厳しく、育成した講師が食べていけなかったり、逆に競合として立ちはだかったりして、事業が立ち行かなくなるケースも少なくありません。成功するのはほんの一握りで、8〜9割は途中でフェードアウトしてしまうのが実情です。

この記事では、講師育成ビジネスに潜んでいる構造的な問題と、それにうまく対応して成功に近づけるための設計のポイントを解説していきます。

個人事業の処方箋記事一覧
第1回 誇大広告や煽りマーケティングは時代遅れ?個人事業のための集客戦略
第2回 売れないLPの原因と失敗を防ぐ3つの設計|LP制作の処方箋
第3回 失敗しないコンサルの選び方|戦略と戦術の違いから理解する
第4回 初めての自動化ツール導入でやりがちな失敗8選|原因と対策
第5回 高額商品が売れない理由と、成功するための条件
第6回 個人事業主のためのブランディング|失敗パターンと正しい進め方
第7回 起業塾で成果が出ない本当の理由|学ぶべきは『何を売るか』
▶ 第8回 講師育成ビジネスの落とし穴と成功に導く4つのモデル
(今後追加予定)

目次

失敗の3つの典型パターン

講師育成ビジネスが難しいのは、失敗したときのダメージが大きいことです。特に典型的な3つの失敗パターンがありますので、それぞれどんな問題を引き起こすのかを以下にまとめました。

講師育成ビジネスでよく起こる3つの失敗パターンを示す図。
左から「市場が狭い(認定講師が顧客を獲得できるだけの市場がない)」「競合になる(認定講師が親講師の顧客を奪ってしまう)」「ブランド毀損(認定講師が内容を勝手にアレンジしてしまう)」の3つが並んでいる。
失敗パターンパターンの説明発生する問題
市場が狭い市場が小さく、認定講師が顧客を獲得できない「認定されたのに仕事がない」という状態が続き、結果として「認定講師になっても仕事が取れない」という評判が広がってしまい、受講生が集まりにくくなります。
競合になる認定講師が親講師と同じサービスを安価で提供し、顧客を奪ってしまう価格競争が始まり、誰も利益を出せなくなる悪循環に陥ります。
ブランド毀損認定講師がオリジナルに改変を加えて教え始める意図しない内容が広まり、「それが本家のやり方」と誤解されることでブランドが傷つきます。最悪の場合、親講師と認定講師が対立し、法的トラブルに発展することもあります。
典型的な3つの失敗パターン

個人事業だからこそ、こうした構造的リスク=避けるべき落とし穴を先に知っておくことが、長く続けられる仕組みづくりの第一歩になると言えるでしょう。そしてこれら3つのパターンは、いずれも単に「やり方が悪かった」のではなく、ビジネスの設計段階から考えておかないと避けられない問題なのです。

次の章では、この問題を生む根本原因──「質を高めると競合、下げると評判悪化」というジレンマを掘り下げます。

講師育成ビジネスの本質的な問題

講師育成ビジネスはなぜなかなかうまくいかないのでしょうか。これを議論するには、講師育成ビジネスが抱える本質的な問題を理解する必要があります。

質を高めると競合を生む

しっかり育成すればするほど、受講生は実力をつけて独立します。結果として同じ市場でライバルになり、価格競争が起きやすくなります。「良い人材を育てるほど、自分の首を絞める」というジレンマに陥ります。

質を下げると評判が落ちる

一方で、真似されないよう、重要なポイントは教えないようにしたり、カリキュラムの質を落としたりすると、今度は受講生が成果を出せず、SNSや口コミで悪い評判が立つようになります。そして、受講生が集まらなくなります。

ライセンスやルールでのコントロールが難しい

競合の問題に対応するために、ライセンスや認定制度でルールを設ける方法もあります。ただ、実際には個人事業レベルで各受講生の運用をチェックするのは大変です。また、トラブルが発生した場合の対応も難しく、関係がこじれて元受講生と対立することになるリスクもあります。


つまり、講師育成ビジネスは「どれだけ育成するか」「どこまで自由にさせるか」という線引きを入念に行う必要があるモデルなのです。ここを曖昧にしたまま始めると、失敗パターンに陥ってしまいます。

成功する4つのパターン

講師育成ビジネスはこのような問題を抱えているものの、それでも成功している事例は存在します。では、成功するにはどうすればよいのでしょうか?

まず大前提として、市場が十分に広いかどうかを確認する必要があります。市場が狭いと、どんなに優れたモデルを作っても受講生が成果を出せず、制度が先細りになってしまいます。

従って、市場性があることを前提としたうえで、成功確率が比較的高い4つのパターンをご紹介します。

パターン1:囲い込み型

認定講師を自社のチームやパートナーとして囲い込むモデルです。社員として雇用、業務委託、フランチャイズ展開などの方法があります。認定講師を自社で抱え込むことで、サービス品質を保ちつつ、競合化も防ぎながら、ビジネスをスケールさせることができます。

ただし、チームやパートナー管理、適切な報酬の設計を行う必要があり、運営の手間やコストがかかります。

【ヨガスクールの例】
インストラクター育成と並行してフランチャイズ制度を整備します。エリアを明確に分け、価格とカリキュラムを統一することで、自身のノウハウに基づいた品質で全国展開を図ります。

パターン2:ブランド提供型

講師自身のブランドを強く打ち出し、「◯◯認定講師」としてそれぞれ独自に活動してもらうモデルです。ブランドが持つ集客力を使う対価として、ブランド使用料を徴収します。ブランドの拡散により、講師自身のビジネスの拡大も見込むことができます。

ブランド自体の集客力が重要となるため、ブランド強化のための活動を継続的に行うことが必要となります。

マーケティング認定プログラムの例】
有名マーケティング講師が「○○認定マーケター制度」を作り、認定者は名刺やプロフィールで肩書きを使用できるようにします。認定マーケターたちは共同で無料セミナーや事例共有会を開催し、講師本人もゲスト登壇してブランドを後押し。こうした共同活動によって、認定者の集客力とブランドの認知度が相乗的に高まります。

パターン3:ツール提供型

独自のツールやシステムを用意し、それを使わないとサービス提供できない仕組みを作るモデルです。ツール利用契約を通じて、認定講師を競合ではなく顧客として囲い込むことができます。

ツールやシステムを提供する必要がありますので、ツール開発や運用のコストと手間がかかります。また、ツールだけでサービス提供できてしまうと認定講師の存在価値が無くなってしまうため、ツールと認定講師の役割分担が重要となります。

健康コーチングの例】
食事記録アプリと自動診断システムを開発し、認定コーチはこのツールを使ってクライアントの食事データを収集します。ツールが栄養バランスを分析し、コーチは具体的な改善プランや生活習慣への落とし込みを伴走サポートします。コーチは人間にしかできないサポートを行うため、存在価値も守りながら、自動診断システム利用量として収入を得ることができます。

パターン4:教育専業型

サービス提供を認定講師に任せ、自分は実務を離れて教育に専念するモデルです。認定講師の育成だけを行うためビジネス規模は縮小しますが、認定講師は直接の競合にはなりません。

このパターンの最大の注意点は、実務を離れることで最新の情報が入らなくなり、講座内容が陳腐化することです。常に最新事例を取り入れながらコンテンツを更新し、現場感覚を保つ取り組みが必要となります。

【資格スクールの例】
宅建や社労士などの資格スクールで、運営者は教材開発と講師育成に専念し、授業は現場経験者が担当します。定期的なカリキュラム見直しを行い、法改正や試験傾向を教材に反映する仕組みを整えることで、教材内容の陳腐化を防ぎます。

設計時に押さえておきたいポイント

4つのパターンのどれを選んだとしても、次のポイントを押さえておくと失敗のリスクを減らせます。

✔︎ 市場性を確認する
認定講師としてビジネスが成り立つだけの市場があるか、参入者が増えてもビジネスを維持できるのかを、事前にチェックしましょう。

✔︎ 条件を明文化する
ブランド名やコンテンツの使用、報酬、ライセンス料など、認定講師としての活動に関する各種条件については、トラブルを防ぐために契約として明確に定めるようにしましょう。

✔︎ 定期的にアップデートを行う
情報や教材が古くならない仕組みをあらかじめ整え、継続的に価値が提供できる状態を維持します。


講師育成ビジネスは注意深く設計しないと問題が発生しやすいモデルです。成功パターンはあるものの、どのパターンも一長一短があり、「これを選べば安心」というものではありません。
自分のビジネスに合ったパターンを選び、想定されるリスクを前提に設計することが、長期的に続く仕組みを作る第一歩になるのです。

まとめ

講師育成ビジネスは、一見するとスケールしやすく魅力的なビジネスモデルに見えますが、設計を誤ると大きなダメージを受けるリスクも抱えています。特に「質を高めると競合、下げると評判悪化」というジレンマは、多くの人が直面する落とし穴です。

この記事で紹介した4つの成功パターンと3つの設計ポイントを参考に、自分のビジネスにとって現実的に続けられる形を、あらかじめ意図して設計しておくことが大切です。

思いつきや勢いで始める前に、一度立ち止まって「どんな形なら長く続けられるか」を考えてみてください。

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第1回 誇大広告や煽りマーケティングは時代遅れ?個人事業のための集客戦略
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第3回 失敗しないコンサルの選び方|戦略と戦術の違いから理解する
第4回 初めての自動化ツール導入でやりがちな失敗8選|原因と対策
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第6回 個人事業主のためのブランディング|失敗パターンと正しい進め方
第7回 起業塾で成果が出ない本当の理由|学ぶべきは『何を売るか』
▶ 第8回 講師育成ビジネスの落とし穴と成功に導く4つのモデル
(今後追加予定)

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この記事を書いた人

国内大手IT企業に16年間勤務し、研究開発やシステム開発に従事。
2017年にマレーシアに移住し、現地の日系IT企業へ転職。
現在は最高戦略責任者(CSO)として、ビジネス戦略や技術戦略の策定、
プロジェクトマネジメント、システム導入・運用までを幅広く担当。

また、ビジネスを安定して運営するための「仕組み設計」を専門とする「LincWeb」を立ち上げ、個人事業主のビジネス設計や、ツールを活用した業務自動化を支援している。

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