起業塾で成果が出ない本当の理由|学ぶべきは『何を売るか』

【個人事業の処方箋シリーズ
個人事業のよくある問題について、背後にある原因と解決策をわかりやすく解説するシリーズです。
持続的に個人事業を成長させるためのヒントをご提供します。

こんにちは、LincWebの水野です。

「たった3か月で月商100万円!」「誰でも成果が出る」といった派手なコピーで受講生を集める起業塾を見かけたことはありませんか?
人間には誰しも「ラクして儲けたい」という心理があり、多くの起業塾がそうした心理に応えるかのように「短期間で売上があがる」といったメッセージを打ち出しています。しかし、いざ通ってみると期待したほどの成果が出ず、「言われたとおりにやったのに、結局意味がなかった…」と感じる人も少なくありません。

なぜ、このようなギャップが生まれてしまうのでしょうか?
本記事では、起業塾で成果が出にくい構造的な理由を整理し、「どう売るか」ではなく「何を売るか」を学ぶことの重要性を解説していきます。

なお、ここでいう「起業塾」とは、「起業スクール」や「売上アップ講座」「収益向上セミナー」など、ビジネス構築や収益改善を掲げるプログラム全般を含みます。ここからは、まとめて「起業塾」と呼ぶことにします。

個人事業の処方箋記事一覧
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第2回 売れないLPの原因と失敗を防ぐ3つの設計|LP制作の処方箋
第3回 失敗しないコンサルの選び方|戦略と戦術の違いから理解する
第4回 初めての自動化ツール導入でやりがちな失敗8選|原因と対策
第5回 高額商品が売れない理由と、成功するための条件
第6回 個人事業主のためのブランディング|失敗パターンと正しい進め方
▶ 第7回 起業塾で成果が出ない本当の理由|学ぶべきは『何を売るか』
第8回 講師育成ビジネスの落とし穴と成功に導く4つのモデル
(今後追加予定)

目次

なぜ多くの起業塾で成果が出にくいのか

起業塾で成果が出にくい背景には、業界全体の構造的な要因があります。

ビジネスを成り立たせるには「何を売るか」と「どう売るか」の両方が欠かせません。実際、多くの企業では、商品企画・開発と営業・マーケティングが分業されており、それぞれ専門の人たちが担当しています。しかし、個人事業の難しいところは、この両方を一人で担わなければならないことです。

このとき、出身分野によって自然と視点が偏るのです。営業やマーケティング出身者は、既にある商品を「どう売るか」を考え、「何を売るか」に踏み込んで商品そのものを見直す発想は弱くなりがちです。一方、開発や商品企画出身者は、「何を売るか」「どう差別化するか」を考え、販売や集客の視点が弱い傾向があります。

そして、起業塾の主催者には営業やマーケティング出身者が多く、「売り方」に軸足を置いた指導になりやすいのです。また、広告、SNSなどの集客ノウハウはパターン化して教えやすいため、多くの塾が「どう売るか」にフォーカスしています。これが、起業塾で成果が出にくい理由です。

中には「コンセプト設計」の位置づけで「何を売るか」に触れる塾もありますが、その多くは「どう売るか」の一工程として軽く扱う程度です。そもそも「何を売るか」には無数の選択肢があり、個人の経験やスキルにも大きく依存するため、一朝一夕に教えられるものではありません。

また、マインドセットにフォーカスし、自己理解や目標設定などを学んだ後に、SNSや広告などの集客法を教える塾もあります。マインドは大切なのですが、肝心の「何を売るか」の深掘りがないものも多く、集客が空回りしやすいパターンです。

結果、多くの受講生は「売り方」を学んでいるのに「売れる商品」ができないという矛盾に直面します。問題の本質は、「何を売るか」の議論が抜けたまま進んでしまう点にあるのです。

起業塾の成果実感と創設者の出身分野の調査結果を示す2つの円グラフ。左は受講生の成果実感で、40%が「成果を実感した」、60%が「実感できなかった」と回答。右は創設者の出身分野で、70%が営業・マーケティング、10%が商品企画・開発、20%がその他。

生成AIを活用して公開データやSNS投稿、受講生アンケート結果を独自に調査したところ、約4割の受講生が成果を実感している一方、約6割は「効果が分からない」「期待外れだった」と感じているとの結果が得られました。塾が発表する「成功率90%」といった数字は、独自の成功基準で母集団を絞り込んで高く見せているケースが多いため、注意が必要です。

生成AIを活用して30人の起業塾創業者の出身を調査した結果、約7割が営業・マーケティング出身(営業経験や集客コンサル含む)、約1割が商品企画/開発・R&D出身との結果が得られました。(残りの約2割は社会起業・教育系やファイナンス系など)
※この比率は、公式プロフィールやインタビュー記事をもとに推定したものです。

何を売るかを決める「ビジネス設計」の重要性

それでは、「何を売るか」はどう考えていけばよいのでしょうか?

まず、「何を売るか」は人によってまったく異なります。なぜなら、ビジネスはあなたの経験・スキル・価値観・強みなどに深く結びついており、他人と同じ商品を選んでも背景が違えば再現できないからです。そこで必要になるのが「自分のための設計」なのです。

設計が無いまま「どう売るか」の手法(例えば、毎日SNSで発信する)だけを真似しても、ビジネスを安定させることは難しいでしょう。逆に、自分の強みや特性を踏まえて作った商品は、適切な発信や集客を行うことができ、自然と成果が積み上がっていくのです。

ここで言う「設計」とは難しい理論ではなく、次の3つを自分なりに組み立てることです。

  • どんな価値を
  • 誰に
  • どのように提供するか

私はこれを「ビジネス設計」と呼んでいます。
そして、ビジネス設計は最初から完璧に作れるものではなく、仮説を立てて実際に試し、お客様からのフィードバックを受けて修正をしていく中で固まっていくものです。考え抜く行為であると同時に、実践と改善のサイクルとも言えます。

ビジネス設計が弱い商品は継続的に売れません。検証を重ねながら設計に基づいた商品を作ることが、安定したビジネスを構築するための条件になるのです。

現在、この「ビジネス設計」の考え方を体系的に学べる動画講座を鋭意作成中です。詳細は今後ご案内しますが、「設計のやり方を学んだうえで自分で組み立てたい」という方に役立つ内容になる予定です。

テクニックは設計があってこそ生きる

ビジネスの世界では、次々と新しい「集客法」や「売れる仕組み」が登場します。
「Instagramでフォロワーを増やせば売れる」「最新の広告運用で売上倍増」など、一見魅力的に見えるものも多いでしょう。

しかしそれらは、設計があるからこそ効果を発揮するものなのです。設計がないまま取り入れても、一時的に結果が出ても長続きしません。

たとえば、SNSで毎日発信をしても、商品に独自性や価値がなければ(=ビジネス設計が弱ければ)、安定的に売上をあげることは難しく、むしろ疲弊してしまうでしょう。

さらに、テクニックはプラットフォームや環境に強く依存しているため、アルゴリズム変更などで突然通用しなくなることもあります。逆に、設計がしっかりしていれば、別の手法や新しいプラットフォームに切り替えても成果を出し続けることができます。

テクニックは、「設計があって初めて力を発揮する補助的な手段」と考えましょう。設計がなければ空回りしてしまいますが、しっかり設計を固めたうえで使えば、ビジネスを加速するための武器になるのです。

教えてもらうマインドでは限界がある

ここまで見てきたように、ビジネスを成り立たせるには「何を売るか」を決める設計が欠かせません。また、「どう売るか」も人によって最適解が異なるため、誰かの手法をそのまま真似てもうまくいきません。

すなわち、これは誰かに答えを教えてもらう類のものではないのです。どんな優秀な講師でも、あなたの強みや経験、バックグラウンドを完全に理解して代わりに設計することはできません。起業塾で成果を出している人も、実際には学んだことを自分なりに解釈し、自分のビジネスに合わせて応用しているはずです。単に教わったことをそのままやっただけではないのです。

言い方は厳しいですが、誰かに答えを教えてもらう姿勢では、起業で成功するのは難しいでしょう。

とはいえ、「自分で設計する」と言われても、何から始めればよいかわからない方も多いかもしれません。
大切なのは、設計の答えではなく「どうやって設計すればよいか」を学ぶことです。起業塾に行くのであれば、少し時間をかけてでも、この設計の考え方やプロセスを学べるところをおすすめします。

失敗しない起業塾の選び方

ここまでの内容を踏まえ、起業塾を選ぶ際にチェックするとよいポイントをまとめます。

①「何を売るか」も指導してくれるか
発信や集客だけでなく、商品設計についても発信や集客と同じレベルで指導してもらえるかを確認しましょう。集客だけを学んでも売れる商品は作れません。

② 講師の成功体験を押しつけていないか
受講生みんなが同じ手法を使うのではなく、自分に合った方法を選べるか、選んだ方法を進めるための支援があるかを確認しましょう。あなたのビジネスに合っていない手法を無理やり適用しても、成果は出ません。

③ 体系化された考え方を教えているか
再現性のある指導には、体系化された考え方やプロセスが不可欠です。単にやり方を並べただけのテクニック講座でないことを確認しましょう。

④ 自分で考える力を育てる仕組みがあるか
言われたことをそのままやるだけではなく、受講後に一人で判断・設計できるようになるための訓練ができるプログラムになっているかを確認しましょう。

これらを満たした塾であれば、再現性の高い学びを得られるはずです。

すでに「何を売るか」が十分に検討できている方へ
すでに自分のビジネス設計ができているなら、「どう売るか」を中心に学ぶ集客講座も有効です。顧客がある程度いる場合には、新しい集客手法や販売チャネルを学ぶことで、次の成長ステージに進めるでしょう。
大切なのは、自分が今どの段階にいるかを見極め、それに合った学びを選ぶことです。

まとめ

起業塾で成果が出にくい理由は、業界構造や受講者の心理に加え、「何を売るか」を置き去りにして「どう売るか」に偏りがちな点にあります。まずは自分に合った土台=設計を固めることが先決です。テクニックはそれがあってこそ効果を発揮します。

実際には、起業塾に行かずに起業している人もたくさんいます。起業は本質的に、誰かに「教わる」よりも、自分で考え、試行錯誤して形にしていくことがベースになるのです。

もちろん、起業塾も正しく活用すれば有効な学びを得られます。ただし、いまの自分に本当に適切な内容かを確認し、過度な期待や依存を避けることが大切です。学ぶべきは「正解」ではなく、自分で設計し判断するための考え方とプロセスなのです。

この姿勢で臨めば、きっと起業塾もあなたのビジネスの後押しとなり、継続的な成果へとつながっていくでしょう。

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この記事を書いた人

国内大手IT企業に16年間勤務し、研究開発やシステム開発に従事。
2017年にマレーシアに移住し、現地の日系IT企業へ転職。
現在は最高戦略責任者(CSO)として、ビジネス戦略や技術戦略の策定、
プロジェクトマネジメント、システム導入・運用までを幅広く担当。

また、ビジネスを安定して運営するための「仕組み設計」を専門とする「LincWeb」を立ち上げ、個人事業主のビジネス設計や、ツールを活用した業務自動化を支援している。

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