高額商品が売れない理由と、成功するための条件

【個人事業の処方箋シリーズ
個人事業のよくある問題について、背後にある原因と解決策をわかりやすく解説するシリーズです。
持続的に個人事業を成長させるためのヒントをご提供します。

こんにちは!LincWebの水野です。

「高額商品は売れないんじゃないか…」そんなふうに考えてしまう方は多いと思います。確かに値段が上がるほど買う人の数は減りますが、売れない理由はそれだけではありません。安くても売れない商品がある一方で、高額でもしっかり売れている商品もありますよね。

では、その違いはどこにあるのでしょうか?
実は、高額商品が売れない最大の理由は、そもそも価格に見合うだけの価値が提供できていないことです。どんな成果や変化をもたらすのかがあいまいな商品は、価格に説得力を持たせることができません。

そこでこの記事では、高額商品が売れない典型的な理由を整理し、「売れる高額商品」を作るために必要になるポイントをわかりやすくお伝えします。

ここでいう「高額商品」とは、コンサルティング、コーチング、オンライン講座、制作、施術など、無形サービスに対して数十万円以上の料金が設定される商品を指します。物販や家電のような高額品ではなく、知識・経験・スキルを活かしたサービスが対象です。

個人事業の処方箋記事一覧
第1回 誇大広告や煽りマーケティングは時代遅れ?個人事業のための集客戦略
第2回 売れないLPの原因と失敗を防ぐ3つの設計|LP制作の処方箋
第3回 失敗しないコンサルの選び方|戦略と戦術の違いから理解する
第4回 初めての自動化ツール導入でやりがちな失敗8選|原因と対策
第5回 高額商品が売れない理由と、成功するための条件
第6回 個人事業主のためのブランディング|失敗パターンと正しい進め方
(今後追加予定)

目次

高額商品の是非は価値で決まる

「高額商品」と聞くと、「怪しい」「ぼったくりでは?」といった印象を持つ人も少なくありません。実際、価値に見合わないサービスが高額で売られている例もあり、そうした疑念を持つ方がいるのも無理はありません。

しかし、高額であること自体が悪いわけではありません。医師や弁護士、専門的な技術コンサルには、数十万〜数百万円の報酬が発生することは珍しくありません。それは、知識や経験の希少性が高く、大きなリターンを生むからです。

つまり、高額商品が正当化されるかどうかは「価格」ではなく「価値」によって決まるのです。価値があれば高額でも売れ、顧客も納得してお金を払います。逆に価値が伴わなければ、どれだけ巧みなセールストークをしても、継続的に売れることはありません。

では、「高額に値する価値」とは何でしょうか?
それを考えるうえで役立つのが、「広さ」「深さ」「再現性」の3つの観点です。これは、高額商品としてよくあるコンサルを始め、専門サービスや制作、施術、教育など、幅広いサービスにあてはめることができる観点です。

高額商品に必要な3つの要素を示す図。左から順に、
・広さ:顧客の状況に合わせて最適な選択肢を提示できること
・深さ:サービスの品質を担保する専門性を持っていること
・再現性:成果を安定的に提供できる仕組みを持っていること
高額商品に必要となる要件
広さと深さを立体的に示した箱の図。横軸に『広さ』、縦軸に『深さ』を取り、吹き出しで『専門性が高い』『様々な選択肢を持っている』と補足。右方向に矢印が伸び、『再現性』を経て『成果(アウトプットに再現性がある)』につながる様子を表している。
広さ・深さ・再現性のイメージ

広さ:顧客の状況に合った最適な選択ができる

高額商品には、顧客の状況に応じたサービスが提供できることが求められます。
参加者全員に同じことを教える講座より、個別事情に合わせたアドバイスを受けられる方が、購入者にとっては価値が高いですよね。

そのためには、様々な状況に対応するための幅広い経験と知見が必要になります。特定の環境にしか通用しない、あるいは一つの方法しか知らないと、顧客にとって最適な選択肢を提示できず、高額商品の期待には応えられないのです。

具体的には、次の2つの「広さ」が重要になります。

  1. 選択肢の広さ
     複数の手法やアプローチを理解しており、顧客の状況に合ったものを選べること。
  2. スコープの広さ
     一つの領域だけではなく、関連分野まで視野を広げて提案できること。

【選択肢の広さの例】
・SNS、広告、SEOなどの複数の手法のトレンド、特徴、リスクなどを理解し、最適な集客手法を提案できるマーケター
【スコープの広さの例】
・デザインだけでなくブランド戦略やコピーライティングまで提案できるLP制作者
・整体だけでなく、食事や生活習慣改善まで助言できる施術者

どの程度の広さが必要かはサービスにもよりますが、選択肢とスコープの両面で十分な広さを持っていることが、顧客にとって「高額でも納得できる理由」になります。

深さ:サービス品質を担保する専門性を持っている

次に、高額商品では、サービスそのものの品質の高さが求められます。
例えば、高額なコーチングなのに誰でも思い付くようなアドバイスしか得られなければ、満足できませんよね。

その品質を支えるのが、専門性の深さです。
現場経験に基づく知見や磨き抜かれたスキルが、顧客が高いお金を払う理由になるのです。
特に重要なのは、次の3点です。

  • 専門知識に基づき、サービス内容について説明責任を果たせる
  • 理論や知識だけでなく、事例や経験に基づいて顧客に最適なサービスを提供できる
  • 一時的ではなく、継続的に専門性に基づいたサポートを行える

こうした深さがあることで、顧客は「この人なら高額でも任せられる」と感じられるのです。

【深さの例】
・商品設計、ビジネスモデル、法務や契約まで、理屈だけでなく過去の事例を踏まえ具体的にアドバイスできるビジネスコーチ
・税制改正や判例を踏まえ、リスクを最小化できる高度な専門性を持つ税理士
・単なるコーディングに留まらず、設計思想、テスト手法、現場で陥りやすい注意点など、実務的知見まで教えられるプログラミング講師

顧客が高額商品に求めるのは、こうした確かな専門性に裏打ちされたサービスなのです。

再現性:成果を安定的に提供できる仕組みを持っている

最後に、高額商品に欠かせないのが再現性です。
どれだけ幅広い知見(広さ)や専門性(深さ)があっても、属人的な経験や感覚だけでば、安定した成果は提供できません。

再現性がある状態とは、広さと深さが体系化され、理論や仕組みとして整理されている状態を意味します。
これにより、顧客は「なぜその方法が有効なのか」を理解でき、安心してサービスを利用できるのです。

【再現性の例】
・語学コーチが学習順序や練習法を体系化し、誰が取り組んでも一定の成果を出せるカリキュラムを作る
・マーケティング支援者が多数の案件の知見をフレームワーク化し、手順を踏めば顧客が自分自身でも使えるようにする
・施術者が、経験だけに頼らず、検査や施術プロセスを標準化して、安定した効果を出せるようにする

高額商品は「成果が出る人と出ない人がいる」では成立しません。誰でも安定して一定の成果を出せる仕組みがあって初めて、顧客は安心して投資できるのです。もちろん、すべての人が最高の結果を得られるわけではありませんが、一定の再現性があることが重要になります。

例外として、アートや職人芸のように「言語化できない感性や希少性」が価格を正当化するケースもあります。しかし、教育・支援・コーチングなどのサービスでは、理論や体系によって再現性を担保することが重要です。


このように、高額商品に必要なのは、「広さ」「深さ」「再現性」の3つです。
そしてこれらを満たすには、「対象領域で十分な経験を積んできたこと」が前提になるでしょう。そのため、あなた自身がこれまで経験を積み上げてきた専門領域にフォーカスすることをおすすめします。未経験の分野に手を出すより、自分の強みや実績をベースにサービスを設計することで、高額でも納得してもらえる商品になるのです。

高額商品の誤解が生む落とし穴

高額商品にはさまざまな誤解がありますが、特によく耳にするのが次の2つです。
一見もっともらしい言葉でも、実際には本質をすり替えており、落とし穴になりかねません。

誤解① 講座を受ければ高額商品が作れる

「この講座を受ければ高額商品が作れる」というフレーズをよく見かけますが、実際には講座で学んだだけでは真っ当な高額商品は作れません。
高額商品には「広さ」「深さ」「再現性」が必要であり、それは一朝一夕で身につくものではないからです。
言い換えれば、「短期間で習得できる=誰でもできる=希少性が低い」ということであり、市場原理的にも希少価値の低いサービスは高額になりえないのです。

誤解② 高額にするのは受講者を本気にさせるため

「高額にすることで受講者が真剣になる」という話もよく聞きます。確かに瞬発的な効果はあるかもしれませんが、中長期的には逆効果と言えるでしょう。顧客が求めているのは、高い価格ではなく高い価値です。価値が感じられれば、価格に関係なく自然に本気になるはずです。
高額にするのは、それに見合う価値が提供できるからに他なりません。価値が伴わないのに高額にしても、悪い評判が出回ったり、口コミも期待できなくなるなど、ビジネス上のリスクでしかありません。ビジネスの大原則である「価値提供の対価として報酬を得る」からも逸脱していると言えるでしょう。

高額商品の問題パターンの例

実際の現場では、こうした誤解がそのまま商品設計に反映されているケースも少なくありません。
典型例が、起業塾などにおける「高額商品=コンサル」という流れです。

一部の起業塾では、受講者に「高額商品を作ろう」と促し、最終的に「コンサルを売ること」を勧めることがあります。しかし、その内容は「広さ」「深さ」「再現性」を満たした本来のコンサルとは程遠い場合が多いのです。
例えば、
・SNSの発信方法や集客テクニックを「コンサル」と称する
・自分の成功体験をそのまま「再現可能なノウハウ」として提供する
・受講者の専門分野と関係ない領域で高額商品を作らせる
といったケースです。

結果、受講者は「高額を払ったのに思ったような成果が得られなかった」という不満を抱きやすくなるのです。
こうした構造は、起業塾自体の評判を下げるだけでなく、「高額商品=怪しい」という市場全体の不信感にもつながるのです。

※コンサルについては、以下の記事も参考になります。

失敗しないための高額商品の見極め方

高額商品を購入する際、「本当にこの金額を払う価値があるのか?」は誰もが気になるところです。
ここでは、買う側が確認すべき3つのポイントを整理します。
なお、これらは結果的に「売る側が備えておくべき条件」とも重なるため、提供側にとっても参考になる視点です。

・広さ:自分に合ったサービスを提供してもらえるか
個別事情に応じたサービスを提供してもらえるかを確認しましょう。
特にグルコン中心の場合、きめ細やかなサポートが難しく、価格に見合う価値を得にくい場合があります。また、教材などで決まったテクニックを教えるだけの高額商品も、値付けが高すぎるケースが多いです。
また、対象テーマを複数の視点でサポートしてくれるかも確認しましょう。例えば、起業コンサルであれば、集客だけではなく、商品設計、ビジネスモデル、法制度、税制まで見てもらえるか。

・深さ:専門性や経験が本物か
担当者のキャリアやバックグラウンドを確認し、「なぜその人がこの商品を提供できるのか」を確かめましょう。
また、その商品の強みや他サービスとの違い、合う人/合わない人などの条件も確認できると安心です。専門性や経験が本物で、商品設計がしっかりしていれば、納得でいる具体的な回答が得られるはずです。

・再現性:提供物が体系化されているか
理論や標準化された手順に基づいてサービスが提供されているかを確認してみましょう。優秀なコンサルであれば、体系化されていなくても成果を出せる場合もありますが、属人的すぎると買い手にとってリスクが大きいでしょう。
また、体系化されていない場合は、提供者は論理的思考が弱いとも言え、本当に高い質のサービスが提供されるか、疑問が残るとも言えます。


これらの3つのポイントはあくまで指針です。個別の事例で例外はあるかもしれませんが、質の低い高額商品を見極める基準として十分に参考になると考えています。

まとめ

高額商品を成り立たせるのに必要なのは、派手なコピーや価格設定のテクニックではありません。
本質はただ一つ、価格に見合う価値を提供できるかどうかです。

その価値を形づくるのが「広さ」「深さ」「再現性」です。結局、あなた自身のキャリアや専門領域に根ざした商品こそが、顧客に安心して選ばれる高額商品になりうるのです。

また、ビジネスの形は高額商品だけではありません。最近は、ツールを活用して動画講座やオンライン教材を効率的に提供する方法もあります。無理に高額商品にこだわらず、単価を抑えて多くの顧客に届ける形も、有効な選択肢と言えるでしょう。

大切なのは「高額か低額か」ではなく、自分の経験や強みを活かし、価値あるサービスを最適な形で提供することなのです。

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第1回 誇大広告や煽りマーケティングは時代遅れ?個人事業のための集客戦略
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第4回 初めての自動化ツール導入でやりがちな失敗8選|原因と対策
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第6回 個人事業主のためのブランディング|失敗パターンと正しい進め方
(今後追加予定)

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この記事を書いた人

国内大手IT企業に16年間勤務し、研究開発やシステム開発に従事。
2017年にマレーシアに移住し、現地の日系IT企業へ転職。
現在は最高戦略責任者(CSO)として、ビジネス戦略や技術戦略の策定、
プロジェクトマネジメント、システム導入・運用までを幅広く担当。

また、ビジネスを安定して運営するための「仕組み設計」を専門とする「LincWeb」を立ち上げ、個人事業主のビジネス設計や、ツールを活用した業務自動化を支援している。

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